海外工場の設備投資に、日本政府が金を出してくれる
「え、海外の設備投資にも使える補助金があるの?」——そう驚く経営者は多い。
環境省のJCM(二国間クレジット制度)設備補助事業。一言で言えば「東南アジアなどに工場を持つ日本企業が、現地で省エネ・再エネ設備を入れると日本政府が費用の一部を補助する」という制度。
なぜ日本政府が海外の設備投資に金を出すのか。理由は明快で、日本のCO2削減目標を達成するためだ。
JCMの仕組み——なぜ海外投資が日本の補助金になるのか
JCM(Joint Crediting Mechanism)は日本と途上国の間の「取引」:
| 日本企業がやること | 日本政府が得るもの |
|---|---|
| 海外工場に省エネ設備を導入 | 削減されたCO2を「日本の削減分」として国際的にカウントできる |
| 脱炭素技術を途上国に普及 | パリ協定の削減目標達成に貢献 |
つまりWin-Win。企業は補助金で設備投資ができ、政府はCO2削減の実績を得る。
具体的にどんな設備に使えるか
省エネ系(電気代直結)
- 高効率チラー・空調: — 東南アジアの工場は冷房コストが膨大。古い空調を更新するだけで電気代30-40%削減も
- 高効率ボイラー: — 蒸気を使う食品加工・繊維工場に有効
- インバータ制御コンプレッサー: — 製造業の圧縮空気は「見えない電気泥棒」。更新効果が大きい
- LED照明の一括更新: — 工場全体で年間数百万円の削減になるケースも
再エネ系(電力の自給化)
- 屋上太陽光発電: — 東南アジアは日射量が日本の1.5倍。投資回収が早い
- 風力発電: — ベトナム南部など風況の良い地域で有効
先端系
- 廃熱回収システム: — 排熱を再利用して冷房やボイラーの燃料を削減
- CCUS(CO2回収・利用・貯留): — 大規模工場向けの先端技術
どの国で使えるか——29カ国の一覧
| 地域 | 対象国 |
|---|---|
| 東南アジア | タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、カンボジア、ラオス |
| 南アジア | バングラデシュ、インド、スリランカ、モルディブ |
| 中央アジア | モンゴル、ウズベキスタン |
| 中東・アフリカ | サウジアラビア、エチオピア、ケニア、チュニジア 等 |
日系製造業が最も多いタイ・ベトナム・インドネシアが全て対象。つまり東南アジアに工場を持つ日本企業のほとんどが使える。
2032年まで7年間——今年逃しても来年がある
この事業は令和8〜14年度(2026〜2032年)の長期事業。
今年度の締切は9月30日だが、来年以降も毎年申請可能。つまり海外工場の設備更新計画に合わせて、最適なタイミングで申請できる。
「来期に空調を更新する予定がある」「3年後に工場を拡張する」——そういった中長期の設備投資計画にJCMを組み込んでおくと、実行時に補助金を引ける。
なぜこの補助金を知らない企業が多いのか
理由は3つ:
- 国内の補助金とは管轄が違う — ものづくり補助金は中小企業庁、JCMは環境省。補助金コンサルの守備範囲が異なる
- 申請手続きが複雑 — 現地パートナーとの共同申請、CO2削減量の算定など、国内補助金にはない手順がある
- 情報が英語混じり — 公募要領の一部が英語で、中小企業の経営者が自力で読み解くのは難しい
だからこそ穴場。知っている企業だけが使っている。競争率は国内の主要補助金と比べて圧倒的に低い。
検討する価値がある企業の特徴
- 東南アジアに製造拠点がある
- 現地の電気代・燃料費が利益を圧迫している
- 工場の空調・照明・生産設備の更新時期が近い
- 取引先から「脱炭素対応」を求められている
1つでも当てはまるなら、この制度を知っておいて損はない。
情報ソース
- J-Net21 支援情報ヘッドライン
- 環境省 JCM関連ページで詳細を確認
※本記事は2026年4月20日時点の公開情報に基づいています。