まず結論:Go-Techは「連携先の大学・研究機関を確保できるか」が9割
Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)は、戦略的基盤技術高度化支援事業(通称:サポイン)の後継として中小企業庁が主管する制度。中小企業 × 大学・研究機関の共同研究を前提に、補助上限1億円規模の研究開発を支援する。
特徴は、中小企業単独では絶対に採択されないこと。連携先となる大学・研究機関が必要で、その関係構築の質が採択を決める。
本記事は、Go-Tech 事業の採択戦略・連携設計・典型的なボトルネックを整理する。
Go-Tech事業の概要
制度の位置づけ
- 正式名称: :成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)
- 主管: :中小企業庁
- 補助上限: :1億円程度(コンソーシアム規模により変動)
- 補助率: :原則2/3
- 事業期間: :2〜3年
必須要件
- 中小企業+大学・研究機関: のコンソーシアム
- 中小企業が事業管理機関(コンソーシアム代表)
- 大学・研究機関は共同研究機関として参画
- 一定の基盤技術領域(鋳造・鍛造・機械加工・組立等)が指定されることが多い
サポインからの主な変更点
サポイン時代と比較して:
- 対象基盤技術の範囲が広がる傾向
- 事業化フェーズへの移行支援強化
- AI・IoT等のソフトウェア領域の追加
採択を分ける5つのポイント
ポイント1:連携先の大学・研究機関の質
Go-Tech は連携先の質が9割。連携先選びで以下を考慮:
- 研究室の研究実績: :論文・特許・受賞歴
- 基盤技術の国内トップクラス: :当該領域での評価
- 企業との連携経験: :他社との共同研究実績
- 研究室の規模: :教授・准教授・院生・助教の体制
→ いきなり連携を打診するのではなく、学会・展示会・学術交流会で関係構築から始める。
ポイント2:事業管理機関としての中小企業の体制
中小企業がコンソーシアム代表(事業管理機関)として、以下を担う:
- 研究開発計画の策定・進捗管理
- 補助金の経理・監査対応
- 大学・研究機関との連絡調整
- 報告書・実績報告の作成
→ 事業管理スキルを持つ社員が必要。技術系のみのチームでは管理面で詰まる。
ポイント3:共通ボトルネックの設定
Go-Tech は「共通基盤技術」を高度化することが目的。1社の課題ではなく、業界全体・複数社が共通で抱えるボトルネックを解決する設計が評価される。
例:
- 製造業の鋳造工程の歩留まり問題(業界共通)
- 建設業の鉄骨溶接の品質ばらつき問題(業界共通)
- 食品製造の異物混入検査問題(業界共通)
→ 「自社だけが困っている問題」ではなく、「業界共通の問題」と位置付ける。
ポイント4:知財戦略の組み立て
Go-Tech 事業の研究成果は、特許・知財として整理する必要がある。
- 中小企業と大学・研究機関の知財共有契約を事前に締結
- 出願時期・国際出願の方針
- ライセンス供与・実施権の設計
→ 「研究は大学、特許は中小」という単純な配分ではなく、貢献度に応じた共有が現実的。
ポイント5:事業化計画の具体性
研究開発成果を事業化する計画を提示する必要がある。
- 量産設備・量産体制
- 販売チャネル・顧客
- 価格戦略・収益試算
- 3〜5年の事業化スケジュール
→ 研究開発で終わらず、実際に売る計画まで含めた事業計画。
連携設計のコツ
コツ1:大学・研究機関との関係構築は1〜2年前から
Go-Tech 申請時に初対面の大学・研究機関と組むのは無理。最低でも1〜2年前から関係構築を始める。
関係構築の場:
- 学会・産学連携イベント
- 業界団体・組合の研究会
- 大学のオープンラボ・公開講義
- 共通知人(業界先輩・同級生・元同僚)からの紹介
コツ2:事前に小規模な共同研究を行う
いきなり Go-Tech の大型共同研究を組むより、事前に小規模な共同研究を実施する。
事前研究のメリット:
- お互いの仕事スタイル・技術力の確認
- 研究テーマの妥当性検証
- 知財・契約面の事前整理
- Go-Tech 申請時の「実績」として記載可能
予算は数百万〜1,000万円規模。自治体補助金や地元商工会議所の研究助成等を活用。
コツ3:複数の大学・研究機関と組む
1校の大学・研究機関だけでは、技術的範囲が限定される。複数の大学・研究機関を組み合わせるコンソーシアムが、Go-Tech では評価される。
組み合わせ例:
- 中小企業 + 国立大学(基礎研究) + 公的研究機関(実装研究)
- 中小企業 + 工業高専(量産研究) + 私立大学(応用研究)
コツ4:研究室と「共通ビジョン」を作る
研究室の教授・研究員にとって、Go-Tech は研究予算の獲得手段であり、論文発表の機会。
中小企業にとって、Go-Tech は事業化の研究投資。
両者の動機は異なる。「論文も出したい、事業化もしたい」という共通ビジョンを作ることが、長期パートナーシップの鍵。
典型的なボトルネック
ボトルネック1:知財帰属の合意ができない
中小企業は「特許は当社の所有にしたい」、大学は「成果は大学に帰属する原則がある」という対立。
→ 共同出願+持分配分で解決。中小50%・大学30%・他研究機関20%等の比率。
ボトルネック2:研究進捗の遅れ
大学・研究機関側のスピード感が中小企業のニーズに合わない。院生のスケジュール、夏休み、年度末等で進捗が止まることがある。
→ 進捗管理担当者を中小企業側に配置。週次の進捗会議。
ボトルネック3:補助金の経理が大学側で回らない
大学の経理は厳格で、大学独自の規則がある。大学側の経理担当者との事前調整が必要。
→ 大学の産学連携担当部署(TLO等)と最初から連携。
ボトルネック4:研究成果の事業化が進まない
研究成果は出たが、量産化・販売化で詰まる。中小企業の事業力が不足するケース。
→ Go-Tech 採択前から、事業化チーム(営業・マーケ・量産設計)を強化。
認定コンサルの本音
「Go-Tech は『サポインの後継』として認知されているが、実態はサポインより範囲が広く、ハードルも上がっている。AI・IoT領域も対象になったので、ソフトウェア系のディープテックも狙える。」
「中小企業が単独で動くのは無理。大学・研究機関との関係構築は1〜2年前からスタートするのが現実的。Go-Tech 公募開始してから動こうとしても、間に合わない。」
「Go-Tech 採択後の事業化フェーズで詰まるケースが意外に多い。研究開発はうまくいったが、量産・販売がついてこない。研究と事業の両輪で動ける経営者が、本制度を最大活用できる。」
まとめ:Go-Tech は「3年計画+連携先の質」で勝負
Go-Tech 事業は、中小企業 × 大学・研究機関の共同研究を前提とした、補助上限1億円規模の制度。
採択を取るためのポイント:
- 連携先の大学・研究機関の質
- 事業管理機関としての中小企業の体制
- 共通ボトルネックの設定
- 知財戦略の組み立て
- 事業化計画の具体性
連携先選び・関係構築に最低1〜2年。今この瞬間から大学・研究機関との関係構築を始めることが、半年〜1年後の Go-Tech 採択を決める。
ディープテック・基盤技術領域の中小企業にとって、Go-Tech は研究開発予算の獲得と、業界での技術的ポジショニングの確立を同時に実現する戦略的制度だ。
※ 本記事は2026年4月時点の制度情報をもとに作成しています。最新の公募要領・指定基盤技術領域は中小企業庁の公式情報をご確認ください。