「未成約でも50万円」という異例の保険設計
秋田県のM&A支援事業補助金、この制度のユニークな点は「譲受型で成約に至らなかった場合でも50万円は出る」という設計。通常のM&A補助金は成約前提だが、秋田はデューデリジェンス費用の回収保険として機能する仕組みを用意している。
後継者不在で地方経済の根幹が揺らぐ秋田県ならではの、手厚い制度設計。
制度概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | M&A支援事業 |
| 実施主体 | 秋田県産業労働部新産業創造課 |
| 対象事業者 | M&Aを実施しようとする/した県内中小企業 |
| 補助率 | 中小企業 1/2・小規模企業 2/3 |
| 上限額 | 譲渡型:100万円<br>譲受型:200万円(未成約時でも50万円)<br>PMI型:100万円 |
| 対象経費 | 譲渡型:仲介契約、企業概要書作成、相手先探索<br>譲受型:デューデリジェンス、仲介成功報酬<br>PMI型:専門家謝金、コンサルティング料 |
| 公募締切 | 譲渡型・PMI型:12月25日<br>譲受型:9月30日 |
| 特徴 | 複数回募集枠あり/事前着手届出で4月1日遡及適用可/予算達成で早期終了あり |
3つの補助枠の使い分け
1. 譲渡型(売り手向け):100万円
会社を売りたい側が使う枠。仲介会社への着手金・企業概要書(ノンネームシート)作成費用・相手先探索費用をカバー。
M&A仲介の相場として、着手金が50〜200万円、企業概要書作成に30〜80万円が一般的。100万円の補助は実質的に着手金の多くをカバーできる。
2. 譲受型(買い手向け):200万円
会社を買う側が使う枠。デューデリジェンス費用・仲介成功報酬をカバー。
デューデリジェンスは事業規模により200〜500万円が相場。仲介成功報酬は最低300万円〜譲渡額の5%程度。このコストの一部を補助。
未成約でも50万円出るのがこの枠の特徴。デューデリで「やっぱり買わない」判断をした場合も、調査費用の一部は回収できる。
3. PMI型(統合後):100万円
M&A成約後の経営統合(PMI)に使う枠。専門家の謝金・コンサルティング料が対象。
PMIは中小企業M&Aで最もコケやすいフェーズ。ここに専門家を入れる文化はまだ定着していないが、統合失敗によるシナジー喪失は買収価格以上に深刻なリスク。100万円で経営統合コンサルを半年〜1年雇えるイメージ。
「事前着手届出で4月1日遡及適用」が効く
これが隠れた神機能。通常、補助金は採択通知後に着手した費用しか対象にならない。しかしこの制度は、事前に「着手届出」を提出すれば、令和8年4月1日以降の費用を遡って補助対象にできる。
つまり:
- 既に今年度に入ってM&A着手金を払ってしまった会社
- 5月からデューデリを開始したい会社
これらすべて、事前届出を出せば対象になる。他のM&A補助金(事業承継・引継ぎ補助金等)ではあまり見ない柔軟な設計。
現場の本音:国の事業承継補助金との併給に注意
秋田のM&A補助金を使う際、国の事業承継・引継ぎ補助金との併給が可能かは必ず確認すべき点。同一経費を二重で補助してもらうのは不可なので、どの費用をどちらの補助金で申請するかの設計が重要。
典型的な使い分け:
- 国の事業承継補助金:売り手側の専門家活用費や統合後の経営革新費
- 秋田のM&A補助金:買い手側のデューデリ費やPMI費
こうすれば、1件のM&A案件で両方の補助金を最大化できる。
こんな会社に向いている
- 秋田県内で事業承継・M&Aを検討している中小企業
- 既に相手先(売却先・買収先)探索を始めている
- デューデリジェンス費用が負担で二の足を踏んでいた
- PMI支援を専門家に依頼する予算が欲しい
- 国の事業承継補助金と組み合わせて使いたい
秋田の事業承継支援は、後継者問題の深刻さゆえに県の投資意欲が高い。使える制度を組み合わせて、最大限活用するのが得策。
※本記事の情報は2026年4月23日時点の公開情報に基づきます。最新の公募要領は必ず[秋田県公式ページ](https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/95760)でご確認ください。